「前は安定していたのに、中学生になってから血糖がまとまらない」。1型糖尿病のお子さんを見守る親御さんから、よく聞く声です。思春期は体の成長が大きく、血糖が乱れやすい時期だといわれています。さらに、自分で管理したい気持ちと、親に頼りたい気持ちが行き来する、心の面でもゆれる時期です。この記事では、思春期に血糖が乱れやすい理由と、親子で少しずつ役割分担を移していく考え方を整理します。
この記事のポイント
- 思春期は成長やホルモンの影響で、インスリンが効きにくくなりやすい
- 血糖の乱れは「本人のがんばり不足」とは限らない
- 管理の役割は、本人の気持ちを聞きながら少しずつ移していく
- 気になる様子があれば、ひとりで抱えず主治医に相談する
思春期に血糖が乱れやすい理由
思春期には、体を大きくするためのホルモンや性ホルモンが多く出ます。これらにはインスリンの効きを弱める働きがあり、同じように過ごしていても血糖が上がりやすくなることがあります。成長に合わせて必要なインスリンの量も変わっていくため、治療の見直しが必要になる時期でもあります。治療全体の見直しは記録をもとに主治医と相談し、日々の調整が必要な場合も、事前に主治医と決めた方法と範囲で行います。対応に迷うときは、次の受診を待たずに相談します。
気持ちのゆれも自然なこと
思春期は、親から少しずつ離れて自分の生活をつくっていく時期です。「自分でやりたい」「口を出されたくない」と言ったかと思えば、急に「やっぱり見ていてほしい」と頼ってくることもあります。友だちの前で測定や注射をしたくない、病気のことを知られたくない、という気持ちが出てくることもあります。どれもこの時期にはよくある自然な反応です。毎日の管理を何年も続けてきたことによる「疲れ」が出てくることもあります。血糖の数字だけで責めるのではなく、まず本人の話を聞くことが、話し合いの土台になります。
役割分担を少しずつ移していく
管理を一気に本人に任せるのではなく、できることから段階的に移していく考え方がよく使われます。
| 移していく例 | 親の関わり方の例 |
|---|---|
| 測定や記録を自分でする | 記録を一緒に見る時間を決めておく |
| 補食やブドウ糖を自分で持ち歩く | 切れていないか、ときどき声をかける |
| 受診で自分の言葉で話す | 聞きたいことを事前に一緒にメモする |
| 学校や部活での対応を自分で伝える | 先生との連絡は必要に応じて親も続ける |
役割分担は、本人の気持ちや理解、負担の大きさを踏まえて主治医と相談します。任せる範囲を広げるだけでなく、負担が大きい時期には家族の支えを増やすなど、柔軟に見直していくことが大切です。大人の医療への移行(移行期医療)では、本人に合った自己管理や受診への参加、進学・就職、医療費の制度なども含めて準備していきます。成人期の診療体制についても、主治医と早めに相談しておきましょう。
早めに主治医に相談したい様子
次のような様子が続くときは、ひとりで抱えず、早めに主治医に相談してください。
- 記録をつけなくなった、測らない日が増えた
- 食事を極端に減らす、体重を強く気にしている
- 気分の落ち込みが続く、学校に行きたがらない
- 低血糖や高血糖をくり返している
責めるためではなく、本人を支える方法を一緒に考えるための相談です。なお、インスリンの打ち忘れやポンプの注入中断に気づいたときは、続くのを待たず、事前に主治医と決めた手順に沿って速やかに対応します。対応がわからない・できないときや、血糖やケトンが決めておいた連絡の目安に当てはまるときは、医療機関へ連絡します。意識がはっきりしない、呼吸が苦しそうなときは、すぐに救急要請します。
よくある質問
Q. 血糖が乱れるたびに、つい叱ってしまいます。
思春期の血糖の乱れには、体の変化が関わっていることも多いといわれます。数字を責めるより「最近どう?」と気持ちを聞くほうが、本人が話しやすくなります。気になる点は受診のときに主治医と共有しましょう。
Q. 本人が受診で何も話してくれません。
受診の前に、聞きたいことを一緒にメモしておくと話しやすくなります。本人だけで主治医と話す時間をつくってもらうのも、ひとつの方法です。
思春期の血糖の変化や治療の見直しは、一人ひとり異なります。この記事は一般的な情報です。インスリンの調整や食事との組み合わせは、主治医や管理栄養士と事前に決めた方法に沿って行い、迷うときは相談してください。必ず主治医の指示に従ってください。
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この記事は、糖尿病・内分泌専門医のDr.いわたつが監修しています。
