隠れ糖尿病(かくれ糖尿病)とは|健診が正常でも要注意な食後高血糖

診断・検査・数値

健康診断で「異常なし」だったのに、血糖に問題が隠れていることがあります。その名も隠れ糖尿病(食後高血糖)。空腹時の数値やHbA1cが正常範囲でも、食事のあとだけ血糖が大きく上がるタイプで、健診の採血ではすり抜けやすいのが厄介なところです。ご本人だけでなく、親御さんやパートナーの結果でも同じことが言えます。

この記事のポイント

  • 空腹時やHbA1cが正常でも、食後だけ血糖が上がるタイプがある
  • 健診の空腹時採血中心では見つからないことがある
  • 診断は医療機関の75gブドウ糖負荷試験(OGTT)など。CGMは変動を見る補助で、それ単独では診断できない
  • 放置すると動脈硬化のリスクにつながる
  • 早く気づくほど、できることが増える

隠れ糖尿病とは

食事をとると、誰でも血糖は一時的に上がります。健康な人はインスリンがすばやく十分に働き、食後の血糖はおおむね落ち着いた範囲におさまります(実際の値は食事の内容・量や測る時点で変わります。検査でよく使う「140mg/dL未満」は、後述する75gブドウ糖負荷試験の2時間後の値の基準で、ふだんの食後ピークの正常上限そのものではありません)。ところが隠れ糖尿病では、インスリンの出るタイミングが遅れたり量が足りなかったりして、食後だけ血糖がぐっと高く跳ね上がるのに、時間が経てば下がるため空腹時は正常に見えます。この「食後だけ高い」状態は、血糖スパイク(食後の急な血糖上昇を指す通称)と呼ばれることがあります。ただし食後高血糖には高い値が続く場合もあり、必ずしも「空腹時は正常」とは限りません。

なぜ健診で見つからないの?

多くの健診は空腹時(朝食前)の血糖と、過去1〜2か月の平均を反映するHbA1cを測ります。空腹時血糖やHbA1cが基準内でも、食後にだけ血糖が高くなる場合があり、こうしたケースでは食後の高い山が検査の網からこぼれ落ちてしまいます。空腹時採血だけでは、食後の血糖の状態は把握できないことがあるのです。

見分けの目安:75gブドウ糖負荷試験(OGTT)

隠れ糖尿病をきちんと確かめる代表的な方法が、医療機関で行う75gブドウ糖負荷試験(OGTT)です。ブドウ糖を溶かした甘い液を飲み、その後の血糖の上がり方・下がり方を時間を追って測ります。判定は空腹時の値と2時間後の値の組み合わせで行い、たとえば2時間値が140〜199mg/dLでも、空腹時が126mg/dL以上なら糖尿病型と判定されます。

OGTT 2時間値 判定
140mg/dL未満 正常型(空腹時110mg/dL未満をあわせて満たす場合。2時間値が140未満でも空腹時110〜125なら境界型、126以上なら糖尿病型)
140〜199mg/dL 耐糖能異常(境界型)※空腹時126mg/dL未満の場合
200mg/dL以上 糖尿病型

※判定は空腹時の値と2時間値の組み合わせで行います。「糖尿病型」は診断のための区分で、これがそのまま糖尿病の確定診断になるわけではありません。無症状でHbA1cが正常の場合、OGTTが一度糖尿病型でも、通常は別の日の再検査で確認します。ただし、同じ採血で血糖値とHbA1cがともに糖尿病型の場合や、糖尿病型の血糖値に口渇・多尿・体重減少などの典型的な症状を伴う場合は、1回の検査でも診断できます。

あわせて、皮下のセンサーで間質液中のグルコース濃度から血糖の推移を連続的に見るCGM(持続血糖測定)を使うと、「どの食事で、どれくらい、いつ上がるか」の傾向が具体的に分かり、対策が立てやすくなります。ただしCGMは変動を把握するための補助的な手段で、糖尿病の確定診断には用いません。

放っておくとどうなる?

食後高血糖のくり返しは、気づかないうちに血管の内側を傷つけ、動脈硬化を進める一因になると考えられています。空腹時が正常でも、食後の山が高い人では血管への負担が積み重なります。だからこそ「まだ糖尿病ではないから大丈夫」ではなく、境界型の段階から向き合う意味があります。境界型については糖尿病予備群もご覧ください。

こんなサインは一度確認を チェックリスト

  • 食後に強い眠気やだるさがある(食後の眠気/ただし眠気は他の原因でも起こり、これだけで食後高血糖とは判断できません)
  • 家族に糖尿病の人がいる
  • のどが渇く・尿の回数が増えた(すでに高血糖が続いているサインのことがあり、続く場合は早めに受診を)
  • 健診は正常でも、間食や甘い飲み物が多い自覚がある
  • お腹まわりが気になる・運動不足が続いている

なぜ「食後だけ」高くなるのか

糖尿病は、インスリンの分泌が減る、またはインスリンの効きが悪くなる(インスリン抵抗性)ことで進みます。その初期には、空腹時を保つための基礎的なインスリンはまだ足りていても、食事のあとに必要な“追加のインスリン”を、すばやく十分に出す力が先に衰えていくことがあります。すると空腹時やHbA1cは正常なのに、食後だけ血糖が高く跳ね上がる、という状態が生まれます。これがいわゆる「隠れ糖尿病」と呼ばれる状態です。なお「隠れ糖尿病」は正式な診断名ではなく、この食後高血糖には、境界型のこともあれば、すでに糖尿病の診断基準を満たすこともあります。必ずしも「これから糖尿病になる前の段階」とは限らないため、実際の評価は医療機関で行います。

今日からできる予防の工夫

診断や治療は医療機関で行いますが、日々の食べ方で食後の山をなだらかにする工夫はできます。野菜やたんぱく質を先に食べる(食べる順番)、ゆっくりよく噛む、甘い飲み物や吸収の速い糖を控える、食後に軽く歩く——こうした小さな習慣が食後高血糖の負担を和らげます。あわせて、体重や運動習慣を見直すことも、インスリンの効きを保つうえで役立ちます。

よくある質問

Q. 市販の血糖測定器の一回の数値だけで判断していい?
A. 自宅で測った数値だけで自己判断しないことが大切です。気になる値が出たら、医療機関で正式な検査を受けてください。

Q. 隠れ糖尿病は治りますか?
A. 境界型の段階なら、生活の工夫で進行を遅らせられる余地があります。まずは医療機関で現状を正しく把握することが第一歩です。

この記事は一般的な情報です。診断は医療機関で行われます。治療中の方は主治医の指示を優先してください。

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