健診の結果票に並ぶ血糖の数字。「いくつからが要注意なの?」というのは、外来でもとてもよくいただく質問です。この記事では、空腹時血糖・食後(随時)血糖・HbA1c・75gブドウ糖負荷試験(OGTT)という代表的な指標を、日本の診断基準にそって整理します。数値はあくまで判断の目安であり、確定診断は再検査を含めて医療機関が行います。
この記事のポイント
- 空腹時血糖は110mg/dL未満、OGTT2時間値は140mg/dL未満が「正常型」の目安
- 空腹時126mg/dL以上、随時またはOGTT2時間値200mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上のいずれかで「糖尿病型」
- 正常型でも糖尿病型でもない中間が「境界型(予備群)」
- 原則は別の日の再検査で確認するが、同じ採血で血糖値とHbA1cがともに糖尿病型の場合などは初回検査で診断できる
血糖の指標には種類がある
ひとことで「血糖」といっても、いつ・どう測ったかで意味が変わります。朝食前などに測る空腹時血糖、時間を問わず測る随時血糖、そしてブドウ糖の水を飲んで2時間後を測る75gブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値があります。さらに、過去1〜2か月の平均を反映するHbA1cを組み合わせて、体の血糖処理能力を多面的に評価します。健診で最もよく使われるのは空腹時血糖とHbA1cです。
空腹時血糖でみる区分
空腹時血糖は、10時間以上の絶食後に測った値です。日本糖尿病学会の基準では次のように区分されます。
| 区分 | 空腹時血糖 |
|---|---|
| 正常型 | 110mg/dL未満 |
| 境界型(予備群) | 110〜125mg/dL |
| 糖尿病型 | 126mg/dL以上 |
※この区分は空腹時血糖単独でみた場合の目安です。最終的な「正常型」は、後述のとおり空腹時110mg/dL未満かつOGTT2時間値140mg/dL未満をあわせて満たす場合を指します。
なお、100〜109mg/dLは空腹時血糖の正常域のうち「正常高値」と呼ばれ、正常型の範囲内ではありますが、OGTTを行うと境界型・糖尿病型に該当することもあり、将来的に血糖が上がりやすい人が含まれるため、健診では注意して経過をみることがあります。
食後・随時の血糖
食後や時間を問わない随時血糖では、200mg/dL以上が糖尿病型の目安です。健康な人でも食事のあとは血糖が上がりますが、通常は上がっても数時間かけて下がっていきます。なお「140mg/dL未満が正常」という値は、75g OGTTの2時間値についての判定基準であり、日常の食後血糖は食事内容や採血時刻によって変わるため、この値だけで一律に良し悪しを判断するものではありません。食後に血糖が急上昇してから下がる「血糖値スパイク」は、空腹時が正常でも隠れていることがあります。
OGTT(ブドウ糖負荷試験)2時間値
境界型かどうかを詳しくみたいときは、75gのブドウ糖を溶かした水を飲み、2時間後の血糖を測るOGTTを行います。
| 区分 | OGTT2時間値 |
|---|---|
| 正常型 | 140mg/dL未満 |
| 境界型(予備群) | 140〜199mg/dL |
| 糖尿病型 | 200mg/dL以上 |
正常型は「空腹時110mg/dL未満かつOGTT2時間値140mg/dL未満」の両方を満たすものを指します。一方、空腹時126mg/dL以上、またはOGTT2時間値200mg/dL以上のどちらかがあれば、もう片方が正常域でも糖尿病型です。境界型(予備群)は、正常型にも糖尿病型にも当てはまらない中間の場合を指します。
HbA1cでみる目安
HbA1cは、血液中のヘモグロビンにブドウ糖がどのくらい結びついているかの割合で、過去1〜2か月の血糖の平均を反映します。その日の食事だけでは大きく動かないため、日々の管理を映す「通信簿」のような指標です。
| HbA1c | 健診での目安 |
|---|---|
| 5.6%未満 | この値だけで糖尿病を除外できるわけではない(健診の目安) |
| 5.6〜5.9% | 将来の発症リスクを踏まえOGTTなどを検討 |
| 6.0〜6.4% | 糖尿病の疑いが否定できず、OGTTが強くすすめられる |
| 6.5%以上 | 糖尿病型 |
HbA1cは、単独では正常型・境界型を確定するための区分ではありません。上の値はあくまで健診での目安であり、診断上の分類とは分けて考えます。くわしくはHbA1cとは・目標値の記事もあわせてご覧ください。
1回の数値で「糖尿病」とは決まらない
大切なのは、上のいずれかが一度基準を超えても、原則としてそれだけで確定診断にはならないという点です。日本の基準では、別の日にもう一度検査して再び糖尿病型であることを確認して診断します。このとき、少なくとも1回は血糖値(空腹時・随時・OGTT2時間値のいずれか)で糖尿病型を確認する必要があり、HbA1cだけを2回くり返しても診断は確定できません。また、同じ日の採血で血糖値とHbA1cがともに糖尿病型であれば1回の検査で診断できます。さらに、糖尿病型の血糖値に加えて口渇・多尿・体重減少といった典型的な症状や確実な糖尿病網膜症があるときは、1回の検査で診断されることがあります。著しい高血糖のときは、診断の手続きとは別に、すみやかな受診・治療が必要です。なお、ここで示した診断基準は医療機関で測定する静脈血漿血糖値に対して用いるもので、家庭用の血糖測定器やCGM(持続血糖測定)の値で糖尿病を確定診断することはありません。健診で「要精査」となったら、自己判断せず医療機関で確認しましょう。
結果票を見たときのチェックリスト
- 空腹時血糖は110mg/dL未満、126mg/dL以上のどちらか
- HbA1cは5.6%未満か、6.5%以上か
- 「境界型」「要精査」「要医療」の記載はないか
- 去年・一昨年と比べて数値が右肩上がりになっていないか
- 気になる項目があれば早めに内科・糖尿病内科へ相談する
よくある質問
Q. 空腹時血糖が正常なら安心ですか?
A. 空腹時が正常でも、食後だけ高くなる「血糖値スパイク」やHbA1cの上昇が隠れていることがあります。両方をあわせて見るのが安心です。
Q. HbA1cが正常なら食後血糖は測らなくてよい?
A. HbA1cは平均値のため、食後の高い山と空腹時の低い谷が打ち消し合って正常に見えることがあります。気になる場合は主治医に相談してください。
Q. 前日にたくさん食べたら数値は上がりますか?
A. 空腹時血糖は前日の影響を受けることがありますが、HbA1cは1〜2か月の平均なので前日だけでは大きく動きません。
数値は判断の目安です。確定診断は医療機関の再検査によります。この記事は一般的な情報であり、診断・治療・具体的な方針は主治医にご相談ください。
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